研究概要 |
ラダーポリシランをTHF中、18-クラウン-6存在下でカリウムを用いて還元すると、ラダーポリシランのラジカルアニオンが生成した。18-クラウン-6を用いない場合でもラジカルアニオンが生成するが、18-クラウン-6存在下ではラジカルアニオンの安定性が増大し、環数にかかわらず室温で安定に存在する。この結果はラジカルアニオンの安定性は陽イオンの状態によって大きな影響を受けることを示している。 また、七環式および八環式ラダーポリシランの酸化電位をサイクリックボルタンメトリーで測定したところ、酸化波のピークだけではなく還元波のピークも観測されることを見出した。一般にポリシランのラジカルカチオンは極めて不安定で、酸化電位における還元波のピークは観測されないが、長鎖ラダーポリシランではラジカルカチオンの安定化が起こり、観測されることがわかった。 四環式ラダーポリシランをメタノール、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、アントラセンなどの捕捉剤存在下で光照射すると、ケイ素-ケイ素結合が開裂して二環式ラダーポリシレンが発生し、その捕捉生成物が得られた。2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンによる捕捉生成物についてはX線結晶構造解析を行い、立体的に混み合いの少ないアンチ異性体であることを確認した。これはラダーポリシレンの発生を示す初めての例である。二環式ラダーポリシレンを3-メチルペンタン中、77Kで発生させると、紫外可視吸収スペクトルでは434nmに極大をもつ吸収帯が観測された。また、三環式ラダーポリシランのシン異性体を光照射すると、ケイ素骨格の異性化が起こり、トリシクロ[3.3.0.0^<2,6>オクタシランと三環式ラダーポリシランのアンチ異性体が生成した。以上の光反応性は分子軌道計算の結果、フロンティア軌道におけるローブの分布によって説明できることがわかった。
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