研究概要 |
カルバゾール発色団は、光電導性を示すことで有名なポリ(N-ビニルカルバゾール)の構成単位であり、その励起状態における光電子物性は興味が持たれている。ポリ(N-ビニルカルバゾール)は光照射下でエキシマーを、またカルバゾールとスチレンの共重合体はテレフタレートのようなアクセプター共存下でエキシプレックスを生成することが知られているが、それらの構造ならびに物性は未解明なことが多い。そこで今回、カルバゾールとテレフタレートとの種々の連結体の合成を行い、エキシプレックスの性質を調べるとともに、その蛍光プローブとしての応用を検討することにした。以下に得られた結果を示す。 [2.2]パラシクロ(3,6)カルバゾロファン骨格のベンゼン環にジエステルを導入したテレフタレート-カルバゾール型シクロファン1を合成し、各種スペクトルからその電子物性を検討した。まず、^1HNMRやX線結晶解析から1の構造は極めて堅固なことを明らかにし、吸収スペクトルから基底状態では電荷移動相互作用はほとんど起こっていないことを確かめた。一方、発光スペクトルにおいて、1はエキシプッレクス型発光のみを示し、しかも発光波長は溶媒の極性に依存して極性溶媒ほど長波長側で発光することがわかった。発光波長と溶媒の極性などからLippert-Matagaプロットを行ったところ直線関係が成立した。よって1のエキシプレックス構造における双極子モーメントは13Dであること、1のエキシプッレクス構造は溶媒によって変化しないことがわかった。さらに、このような1の特異な発光現象を利用して、1の発光波長からある与えられた温度における種々のポリマー中での局所的な極性の見積もりが可能なこと(蛍光プローブとしての応用性)を明らかにした。
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