研究概要 |
カルバゾール発色団は、光電導性を示し青色発光することから、その励起状態における光電子物性は大変興味が持たれている。光照射下、カルバゾール発色団は部分重なり型と完全重なり型の2種類のエキシマーを生成すると言われている。そこで、二つのカルバゾール環が重なった三架橋系カルバゾロファンを合成し、蛍光スペクトルから完全重なり型のエキシマーの性質を調べた。さらに、2架橋系カルバゾロファンの時間分解EPRスペクトルから、三重状態における性質について検討した。また、前年度はカルバゾールーテレフタレート型シクロファン1の合成を行い、エキシプレックスの性質を明らかにすることができた。そこで、今年度は1のエキシプレックス発光から高分子内での光誘起電荷分離過程について検討することにした。以下に得られた結果を示す。 カルバゾールの3,6,9位で架橋した[3.3.n](3,6,9)カルバゾロファン2n(n=3〜6)を合成した。nの数が増大するにつれて二つのカルバゾールの面角は大きくなることをNMR,X線結晶解析から明らかにした。2nは蛍光スペクトルにおいて、すべてエキシマー型発光を示し、しかもnの数が増大するにつれて発光波長が短波長シフトしていた。以上のことからカルバゾール環がほとんど平行になった[3.3.3]系で最も安定なエキシマーが生成することがわかった。次に2架橋系カルバゾロファンのEPR測定におけるゼロ磁場分裂パラメータから、T_1状態において上下のカルバゾール環に励起子が非局在化する割合は、部分重なり型では約40%、完全重なり型では約90%にも達することがわかった。さらに、1のエキシプッレクス構造は溶媒によって変化しないこと利用して、1の発光波長からガラス転移温度以下における種々のポリマー中での局所的な極性の見積もりが可能なこと(蛍光プローブとしての応用性)を明らかにした。
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