研究課題
基盤研究(C)
3中心4電子結合(3c-4e)の研究は広範に行われているが、その拡張系であるmc-ne(m≧4)系すなわち、拡張超原子価結合は理論的にも実験的にも研究が始まったばかりである。弱い相互作用を巧みに利用した研究例は多いが、弱い相互作用を分類し、それらの全容解明を目指した例はほとんどない。申請者らは、拡張超原子価結合の特性は、超原子価結合とは、全く異なることを明らかにしてきた。本研究課題では、これまで構築に成功したナフタレンの系における硫黄やセレン原子による4c-6e系、アントラセンおよびアントラキノンの系における5c-6e系の知見をもとに、アントラセンの系において、4c-6eおよび6c-10eの構築に成功した。NMRやサイクリックボルタンメトリー、UV等による機器測定を行い、一方で計算化学の手法を駆使して評価を行い、その特徴を究明した。しかし、結晶が細い針状晶であるため、X線結晶構造解析を行うのに適した単結晶が得られず、現在なお単結晶作成に取り組んでいる。また拡張超原子価結合系の評価を行うにあたり、「化合物の電子状態を検討するため、^<77>Se NMR化学シフト値の測定値をその計算値を含めて比較検討することにより、詳細な検討を行う。」という観点から、一昨年から取り組んでいる^<77>Se NMR化学シフトにおけるアリール基の配向性について実験的・理論的立場から詳細な検討を行い、さらに種々の化合物についてその応用を行った。その結果これまで溶液状態の構造解析が、困難であった化合物についても解析が行えるようになうた。また化学シフト値の起源をセレン原子とその置換基の相互作用に着目して究明することが可能となった。さらに、拡張超原子価結合5c-6e系を3c-4e系と比較しながら、Atoms-in-Molecules(AIM)解析を用いて、それらの結合様式を詳細に明らかにした。
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