研究概要 |
本研究では、ビスマスやアンチモンのような重いヘテロ原子を金属中心とし、非交互共役系炭化水素であるアズレンを配位子に用いることで、それぞれ個別的に検討が進められて来たヘテロ原子、ならびにアズレンの化学を合体し、複合的な化学性を見出すとともに新規機能性物質の創成を目指している。昨年度の研究において、アズレニル基を有するビスムタン、スチビン類の合成とその酸化的ハロゲン化反応を達成し、X線結晶構造解析ならびに^<13>C-NMRスペクトルにより、これらの化合物の構造特性を明らかにしている。 本年度は、交互共役系配位子と非交互共役系配位子の電子効果の違いを明らかにするため、まず、p位に電子供与性または受容性基を有するトリアリールビスムタン、スチビンより5価ハロゲン化物をそれぞれ合成し、p位置換基がハロゲン化反応速度やアリール基のπ分極に及ぼす効果ついて精査した。トリアリールビスムタンの場合、酸化的ハロゲン化反応の速度はp位の電子受容性基の効果を顕著に受けるのに対し、トリアリールスチビンでは置換基効果が小さく、ビスマス原子とアンチモン原子の反応性の違いが顕著に見られた。^<13>C-NMRスペクトルにより5価ハロゲン化物と3価化合物を比較し、アリール基のπ分極の程度を検討したところ、アンチモンに比べビスマスの場合においてイプソ炭素のケミカルシフト値に顕著な変化が見られた、しかし、この変化は非交互系配位子であるアズレニル基の場合に比べて小さいことから、非交互共役系配位子が交互共役系配位子に比べ高いπ分極能を有するといえる。 さらに、トリアリールビスムタンのp位にカルボキシル基を有するビスムタンのハロゲン化により、相当する5価ハロゲン化合物を安定に単離することに成功した。また、1,3-ジクロロ-6-カルボキシアズレン類のリチオ化を種々検討し、このアズレンカルボン酸の2位にビスマス原子を導入することにも成功した。これらの化合物が結晶中でどのような会合構造を形成し、どのようなゲスト分子を取り込むか、興味が持たれる。
|