われわれの用いたラジカル環化系におけるCaptodative効果の定量の基礎的な検討として、アリールラジカルの6-exoあるいは7-endo環化の位置選択性を明らかにするために、ラジカル環化の反応機構の検討を行った。水素ドナーの濃度を変えて環化前駆体のラジカル環化をさせたところ、7-endo体と6-exo体の生成比が変化した。neophyl転位の前後に生じるラジカルを発生させ、転位が進行するかどうかを検討した。Bu_3SnHの濃度を変化させるにつれて、環化体7-endo /6-exoの比は大きく変化した。例えば、ラジカル環化させた場合、Bu_3SnHをシリンジポンプでゆっくり加えた場合(slow addition)、96/4と高い7-endo選択性が達成されるのに対し、Bu_3SnHをあらかじめ加えておいて反応させた場合は、7-endo /6-exoの混合物を与えた。また、6-exo環化体の生成割合はBu_3SnHの濃度が高いほど大きくなった。Bu_3SnHをシリンジポンプで滴下を行うと、その濃度は約10^<-5>のオーダーになることから、Bu_3SnHをきわめて薄い濃度に保ちながら環化を行えば高い7-endo選択性が達成できることが明らかとなった。すなわち、このことは、環化が、直接的な6-exo/7-endo環化だけでなく6-exo中間体ラジカルのneophyl転位を経て7-endo中間体ラジカルになっていることを強く示唆する。さらに中間に生じるラジカルを別途発生させてこの点に反応の速度を見積もった。 一方αチオアクリルアミドの合成法を開発するために、Mannich反応やBaylis-Hillman反応を応用して検討を行い、その可能性と適用限界を調べた。
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