研究概要 |
1、異種多核錯体ユニットの連結合成法の確立:酸化還元および発光性に特徴を持つルテニウム三核錯体(Ru3)およびレニウム六核錯体(Re6)を架橋配位子(4,4'-ビピリジン)により組み合わせ連結した錯体を数種類合成し、紫外可視吸収、赤外吸収、NMR等の各種分光法、さらに電気化学的手法により同定した。新規連結型錯体は錯体ユニットの数、組み合わせ、幾何構造を制御したヘテロ錯体であり、本研究で目指す基板表面集積化へのbuilding blockとして有用である。 2、ヘテロ型連結多核錯体の酸化還元挙動の解明:サイクリックボルタンメトリーの測定により、連結型多量体は溶液内中、構成ユニットの種類と数を特徴づける多段階可逆な酸化還元波を与えた。 3、金電極表面へのヘテロ型ナノ構造体形成:上で得たヘテロ型連結錯体を金電極表面へ逐次的にボトムアップ化し、多層構造体の形成を行なった。具体的には、金電極表面へRu3錯体の自己集合化単分子層を既知法により表面密に形成し、水/単分子層界面における配位子置換反応を誘起することで、末端非配位の4,4'-ビピリジンを持つRu3-Re6連結錯体をRu3単分子層の上へ積層化した。この手法により、Ru3-Re6-Ru3の錯体ヘテロ連結体が電極界面へ定量的に構築された。最上端のRu3錯体に配位するCO配位子は、基板電位を制御することにより脱離され、それに替わって水分子が配位した錯体膜へと変換される。今後、この水分子配位サイトを起点として、さらに錯体を積層化できる可能性がある。また、ヘテロ多量体は電極界面において効率良い多電子移動を示すことも明かとなった。以上より本系は分子エレクトロニクス材料としても可能性を秘めていることが示唆された。 4、この他、プロトン共役電子移動を示すルテニウム二核錯体をRu3単分子層上へ定量的に積層化することにも成功し、電解質水溶液のプロトン濃度調節により界面多電子移動を制御し、さらに分子内電位勾配をスイッチングできることも判った。
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