これまで様々な有機-無機ハイブリッド包接化合物が合成され、多様な基質を用いて選択的ゲストの包接や反応などが研究されてきた。最近ゼオライトのような細孔性材料には見られないような特性が見出されてきている。さらに精密な分子設計を行うためには、柔軟な配位空間の特異性の起源を原子レベルで検討する必要がある。本研究では、通常X線回折により直接観察することが困難な光化学反応をとりあげ、「超分子化学」的アプローチを適用したX線回折によるその場観察により、自己集合性中空錯体が有する孤立した配位空間の特異性について検討することを目的とした。具体的には、M6L4組成で表される自己集合性かご状錯体をホストとして用いて、光感応性マンガンカルボニル錯体の集積化に成功し、X線構造解析により構造を同定した。かご状錯体の配位空間により、ゲスト分子そのものでは取りえない、分子配列の制御を実現した。また、極低温下この錯体の単結晶に光照射を行ったところ、ゲスト単体の結晶では起こらなかった色の変化が観測された。光照射により4分子のうち1分子のカルボニル錯体から1分子のカルボニルが脱離するという高度に立体選択な反応を観察し、配位不飽和種の構造がピラミッド型であることをX線構造解析によりはじめて実験的に証明することができた。この結果は、J.Am.Chem.Soc.に速報として掲載されることが決定している。
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