| 研究概要 |
平成16年度は、歪んだ構造を持つ金属ポルフィリン錯体の性質や配位子置換反応など反応性の体系化のための反応機構の解明と知識の集積を全体的な目標とし、(1)金属ポルフィリン錯体の合成とキャラクタリゼーション、(2)金属ポルフィリン錯体の関与する反応の反応機構の解明、(3)光化学的特性の解明を柱とした研究を遂行した。
非平面型のポルフィリンとして、2,3,5,7,8,10,12,13,15,17,18-ドデカフェニルポルフィリンおよび2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-5,10,15,20-テトラフェニルポルフィリンを用いて、それらの銅(II)およびクロム(III)錯体を合成し、元素分析や各種の分光学的手法を用いて化合物のキャラクタリゼーションを行った。銅(II)錯体については、アセトニトリル中での銅(II)イオンとの電子移動反応の速度論を研究して、ポルフィリン錯体の自己電子交換反応の速度論的パラメーターを求め、ポルフィリンの構造の歪みと電子移動反応の反応性との相関を明らかにした。クロム(III)錯体については、配位子置換反応および光化学反応の機構を明らかにする上で必要な錯体の特性に関する知見を得るために、X線吸収スペクトルを測定してその電子状態を調べた。また、吸収スペクトルの時間変化を利用して、溶液中での軸配位子の置換反応の速度を測定した。さらに測定を重ねて、反応の全体像を明らかにした上で、置換反応に及ぼす置換基の電子的効果や立体的効果に基づいて、その反応機構を考察する予定である。
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