研究概要 |
本年度は金属環状多核配置を構築する方法論を確立することを目指し、合成実験を中心に研究を展開した。金属鋳型反応をベースとしたシッフ塩基環化反応を利用し、以下の2つの方法により巨大環状構造を達成させることに成功した。 1)単環型巨大環状錯体 錯体中央の空孔サイズをマクロ環前駆体のジアミンの長さで制御しようと計画し、ドナー原子の組み合わせとスペーサー長の異なる2つの新規長鎖ジアミン1,11-Diamino-3,6,9-trimethyl-3,6,9-triazoundecane (Me_3daud)と1,17-Diamino-3,15-dimethyl-3,15-diazo-6,9,12-trioxaheptadecane (Me_2Ohd)を合成した。これらジアミン誘導体は、2価の金属酢酸塩(例えばMn(II)、Zn(II)、etc)存在下で2,6-ジホルミル-4-メチルフェノール(DFMP)と反応し、結晶性の巨大シッフ塩基環状錯体を与える。今後、こられ錯体群の結晶構造とホスト機能について詳細に調べる予定。 2)多環型巨大環状錯体 前述のDFMPを双方向に共有結合で連結したテトラアルデヒドを用いれば、小環状サブコアが交互に連結した多環型巨大環状金属錯体が得られると考え、新規テトラアルデヒドとして3,3',5,5'-tetraformyl-4,4'-dihydroxydiphenyl sulfone (TFDS)を合成した。2当量のCu(II)イオン存在下、TFDSとトリメチレンジアミンの等モル反応が、可溶性の多環型巨大シッフ塩基環状錯体を与える事を見い出した。分子模型の考察から、この錯体の構造として二核コアが6ユニット連結した12核構造が提唱された。この錯体の二核サブコアは可逆的な1電子還元(錯体全体としては1段階6電子還元)を受ける事から、金属のレドックスを利用したホスト機能のスイッチングに利用できると考えている。
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