研究概要 |
1 [二座ホスフィンを配位子とする錯体の光励起状態]biphep(1,1'-bis(diphenylphosphino)-2,2'-biphenyl)等のジホスフィンが2分子配位したパラジウム(O)、白金(O)錯体について発光スペクトルや励起状態寿命の温度変化を測定した。その結果通常とは異なる挙動、即ち温度の低下と共に発光強度が減少することを見いだし、これらの結果から発光励起状態について考察を行った。 2 [三座ホスフィンが配位したパラジウム(O)錯体の光化学反応]第一に三脚状三座ホスフィンであるtdphos(1,1,1-tris(diphenylphosphinomethyl)ethane)とトリフェニルボスフイン(PPh_3)が配位したパラジウム(O)錯体[Pd(triphos)(PPh_3)]は発光減衰曲線が単純指数関数にならないこと、PPh_3を添加すると発光強度が増大することなどの現象を説明するために、発光強度、発光寿命、NMR等の温度変化を測定した。その結果励起状態でのみPPh_3の配位平衡が存在することを確認した。第二にこの錯体の光化学反応について検討を行った。この錯体は炭化水素溶媒中で可視光照射によって長波長側に新たな吸収帯が出現することが分り、その反応について詳細に検討した。第一の実験結果と合わせてトリフェニルホスフィンの解離と芳香族溶媒分子の配位が示唆された。第三にこの錯体を触媒とした1,2-ジクロロエタンの脱塩素反応について検討した。ジクロロエタン-ベンゼン混合溶媒にトリフェニルホスフィン、カリウムメトキシド、さらに触媒量の本錯体を加え、可視光を照射することで、エチレンが生成することを確認した。 3 [銅錯体の光励起状態]上記の錯体と同じd^<10>電子配置を持つ銅(I)錯体の電子励起状態についても検討を行い、d^<10>電子配置の励起状態の構造変化と光酸化反応について考察も行った。
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