新規の磁気特性発現の可能性を探るために、前年に引き続いてルテニウム二核にオクタシアノタングステン酸を反応させた系についての合成実験を行った所、昨年得られていた一次元錯体は、わずかな合成条件の違いに依っては、二次元、三次元集積していることが判明した。これらの化合物は、フェリ磁性的相互作用を示し、注目に値する。現在、単結晶化の条件を検討している。ルテニウム二核の系については、ユニークな磁気特性が期待されるので、これまでの一次元、二次元、三次元集積の成功例を収集し、次元性制御の要因と磁気特性について考察を加えた。この考察の過程でこの系について液晶性の導入が重要であることが判明し、現在、その合成を試みている。 オクタシアノタングステン酸が光照射下、酸素を取り込み、酸素錯体を形成することを明らかにした。この酸素は過酸化物の形でタングステンに配位し、13面体9配位の珍しい構造を与える。 カルボキシラト-ヒドロキソ架橋の二核銅(II)錯体の系について磁気的相互作用の様子を調べた所、Cu-O-Cu角に依存して強磁性的もしくは反強磁性的相互作用が主になることが観測された。この系の台形型四核錯体の磁気挙動も明らかにし、その解釈を試みた。 ピリジンカルボキラトのコバルト(II)錯体の磁化率の温度依存性を調べた。 安定なラジカルとして、アダマンチル基を取り付けたNOラジカルが合成でき、数種の銅(II)錯体の結晶構造を明らかにし、磁気的相互作用を調べている所である。
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