研究概要 |
検量線も比較標準も使用せずに物質量(モル)を決定する方法である絶対定量法は,その高い正確さとSIトレーサビリティから基準分析法として位置付けられている。本研究では,同位体希釈の原理に基づいた新規な絶対定量法の開発を主目的とし,含リンアミノ酸のキラリティーを利用した絶対定量法および核磁気共鳴を用いるリチウム同位体希釈分析法を開発した。 1.キラリティーを利用する新規な絶対定量法(鏡像異性体比変化法)の開発 含リンアミノ酸系除草剤のグルホシネート(D,L-GLUF)の定量において,試料に既知量のL-GLUFをスパイクし,γ-シクロデキストリン修飾キャピラリー電気泳動を用いてキラル分離を行い,D-GLUFとL-GLUFのピーク面積比を求めるだけで定量できることを示した。さらに,蛍光検出とオンライン濃縮法を組み合わせた高感度検出法を検討し,超微量のD,L-GLUFの絶対定量法を確立し,モデル試料により精度と正確さを評価し,有用性を実証した。 2.リチウムの新規な同位体希釈分析法の開発 非水溶媒中のリチウムイオンの錯形成を^7Li-NMRを用いて研究し,クリプタンド[2.1.1](C211)を不足当量試薬として用いることにより,常に一定量のリチウムをC211錯体としてNMRスペクトル上で遊離のリチウムイオンからシグナル分離できることを見出した。この不足当量シグナル分離法と同位体希釈法を結合したSID-NMRは,目的元素の定量的な回収や回収率の補正を必要とせず,また検量線も必要としない絶対定量法であり,モデル試料を用いて実用性も確認した。このほか,2-ナフトイルトリフルオロアセトンと2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリンを用いたリチウムの新規な置換滴定法を開発した。
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