研究概要 |
微小イオン会合体相抽出・濃縮法とは,「試料水に,適当な組み合わせの有機陽イオンと有機陰イオンを加え,遠心分離すると,微小イオン会合体相が生成する。試料水中に疎水性の分析目的成分があれば,イオン会合体相に選択的に抽出される。イオン会合体相を少量の低毒性の溶媒で希釈し,測定に供する」方法である。高濃縮率を達成でき,使用する試薬,試料水量,廃棄物量の少量化することができる。 イオン会合体相が,有機溶媒や固相と比べて,どの程度の抽出能を持っているのか,どのような化学物質が抽出されやすいかを調べた。有機陽イオンとしてアルキルベンジルジメチルアンモニウムイオン(CnBzDMA^+,n=12,14,16)およびベンゼトニウムイオン,有機陰イオンとしてフェノールスルホン酸イオン(PS^-)を使い,イオン会合体相を生成させ,アルキル基の炭素数の異なるフタル酸エステル類やアルキルフェノール類をイオン会合体相へ分配させ,その分配定数(K_d=(イオン会合体相における目的化学物質の濃度)/(水相における目的化学物質の濃度))を求めた。 PS^-生成するイオン会合体相は,ベンゼトニウムイオン,ついで,C12BzDMA^+,C14BzDMA^+の順で,水相と相分離しやすかった。PS^-とC16BzDMA^+からなるイオン会合体相は,検討した条件では,水相と完全に分離せず,分配定数を求めることができなかった。イオン会合体相抽出における目的化学物質のメチレン基1ヶあたりの寄与は,溶媒抽出(オクタノール)よりも小さいことがわかった。イオン会合体相を形成する有機陽イオンのアルキル基の炭素数が増える(C12BzDMA^+→C14BzDMA^+)と,分配定数が小さくなる傾向が見られた。
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