研究概要 |
前年度に行った走査型電気化学顕微鏡(SECM)を用いる天然抗酸化剤(アスコルビン酸およびクロロゲン酸)のニトロベンゼン/水界面およびベンゼン/水界面での電子移動の研究に関して、反応機構に関する詳細な検討を行った。これにより、油水界面電子移動の反応様式の一つであるイオン移動機構には、従来の水相中での電子移動によるもの以外に、油相中での電子移動によるものがあることが分った。この研究成果については、2005年12月にハワイで開催された2005環太平洋国際化学会議において口頭発表を行った。 一方、油水界面電子移動のもう一つの反応様式である電子移動機構(真の電子移動反応)について、これを支配する基本的な法則を理解するため、1,6-ジクロロヘキサン/水界面でのデカメチルフェロセンとヘキサシアノ鉄酸との電子移動反応の速度定数をSECMによって測定した。測定された二次の速度定数kは反応のギブズ自由エネルギー変化(ΔG)に依存したが、kが大きな領域では、先に我々が提出した理論的予測に一致して、kの値が頭打ちになることが分った。この結果は、速度定数kがΔGに依存するとしたマーカス理論を基本的に支持するとともに、油水界面電子移動が二分子反応であることに着目した我々の考えを支持した。つまり、SECMなどの電気化学的手法により測定される見かけの速度定数は、界面での酸化還元物質の微視的拡散プロセスの効果を含んでおり、界面での電子移動プロセスが非常に速い場合、拡散律速となることが示唆された。しかしながら、頭打ちとなったkの値は、先の我々の理論によって見積った拡散律速の速度定数よりも一桁小さく、現在のところ、その理由は分っていない。さらなる実験的検証が必要と思われる。
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