《アミノ酸の光学異性体の化学発光(CL)分子認識》 [4-ビニルピリジン/銅/L-トリプトファン]3元錯体の調製法について種々の検討を加え、過酸化水素と反応して強いCLを与える錯体を得ることができた。この3元錯体を、エチレングリコールジメタクリレート(架橋剤)を用いてポリマー化した後、L-トリプトファンを除去することによりL-トリプトファン認識ポリマーを作製した。この分子認識ポリマーに新たにL-トリプトファンを吸着させ、過酸化水素を加えるとCLが生じることを確認した。また、不完全ではあるが、トリプトファン光学異性体の認識能も確認できた。検出感度及び光学異性体の認識能の向上には4-ビニルピリジンを含め種々の機能性モノマーを用いて、CL活性及び分子認識点の増加についての検討が必要である。 《環境ホルモンのCL分子認識》 ・フェノール性環境ホルモンのCL計測 エストラジオール受容体の代替として開発した分子鋳型ポリマーを用いて、フェノール性環境ホルモンDES(ジエチルスチルベストロール)に対する置換活性に基づく定量を試みた。環境ホルモンであるノニルフェノール、ビスフェノールAについて検討を行った。競合反応に基づくDESの置換は確認されたが、その定量範囲は狭く実試料における測定は困難であるため、非特異的吸着を抑制するなど更なる検討が必要である。しかし、エストラジオールについて検討を行った結果、10^<-5>〜10^<-4>Mで定量が可能で、エストロゲンなどのフェノール性ステロイド化合物の定量に有効であることがわかった。 ・フタル酸エステル分子認識場の構築 CL物質のルミノールはフタル酸エステルと類似した構造のためフタル酸エステル認識ポリマーに選択的に吸着し、競合反応の際のプローブとして利用できる。まず、ポリマーのルミノールの吸着量を測定して認識能の評価したところ、鋳型分子にフタル酸、機能性モノマーにメタクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、架橋剤にエチレングリコールジメタクリレート、重合溶媒にアセトニトリルを用いたポリマーで良好な結果が得られた。このポリマーを用いて行ったルミノールとフタル酸エステルの競合反応により、10^<-6>〜10^<-4>Mのフタル酸エステルを検出できた。今後は実試料測定に向け、フロー法を用いた測定法の検討を行う。
|