研究概要 |
カーボンナノチューブ(NT)を電極基板に安定に固定化したNT修飾電極は、電極活物質に対して高い電極触媒機能と孔内部への濃縮機能を発現し、グラファイトや他の固体電極では見られない特有の性質を示した。次に、電極表面に固定化したNTに酵素を固定化した新規なバイオセンサの開発を目指し、比較的低分子量の酵素HRP(西洋ワサビ起源ペルオキシダーゼ;Mw=44,000)とMP-11(マイクロペルオキシダーゼ;Mw=1,861)を選択した。HRPセンサは非常に高感度に過酸化水素に応答した。MP-11センサは長期間にわたる安定性を維持し、MP-11分子がNT細孔内に安定に保持されていることがわかった。また、強酸の加熱処理によりNTの先端部にカルボキシル基を導入し、カルボジイミド誘導体を架橋剤として酵素<グルコースオキシダーゼ>を固定化したバイオセンサについて検討した。メディエータとしてベンゾキノンを加えると、NTの触媒作用によりベンゾキノンの感度が増大すると共に可逆性が改善され、酸化還元電位が陰電位側にシフトしたため、低電位での測定が可能になった。また、ビオチン-アビジン反応によりビオチン標識酵素を二層、三層と結合したセンサは、高感度にグルコースに応答した。さらに、NT修飾電極にクラウン、シクロデキストリン、大環状ポリアミンを固定化したセンサでは、それぞれカテコールアミン、ビスフェノールA、ジカルボン酸に対するホストーゲスト反応に基づいた濃縮機能を有し、それぞれに高感度に応答した。 本研究で用いたNTは多層NTであったが、最近カルベール(カップ積層型NT)NTが注目されている。これは80-100nmの孔直径を有していることから、酵素分子を孔内部に取り込んだセンサの開発に取り組んでいる。
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