研究概要 |
I.大腸菌由来のアルカリホスファターゼの固定化と識別素子への適用 (1)アルカリホスファターゼの固定化と性能評価 アルカリホスファターゼ(ALP,比活性70 U/mg)を微細孔性ガラス(粒子径、120-200メッシュ、孔径約24nm)上に定量的に固定化し、プラスチック製のカラムに充填した。このカラムを亜鉛(II)イオンの識別素子として用いるために、フローインジェクション分析システムを構成し、特性評価を行った。酵素触媒活性の性能の評価用にフロー式可視・紫外分光検出器を用いた。その結果、酵素の触媒部位が全て亜鉛(II)イオンで飽和された状態(ホロ酵素)では、2.0mMのリン酸p-ニトロフェニルを0.1mL注入すると、カラム流出液について0.1%精度で吸光度の変化を追跡、っまり生成物であるp-ニトロフェノールを検出でき、ひいては触媒活性を評価できることが示された。 (2)アポ酵素への通電による変換と亜鉛(II)イオンの計測への適用 酵素カラムの出入り口にそれぞれ白金管を取り付け、これらを両極として2.0mAを通電した。その結果、5分間以上、pH 4.5で通電することにより、触媒活性が全く発現されなくなることが認められ、アポ酵素に変換されたものと見なした。これは、化学試薬を用いることなしに、物理的方法で簡易にアポ酵素を取得できる方法を例証したものである。アポ酵素の状態にあるカラムに対して、種々の濃度に調製した亜鉛(II)イオン液を注入すると、それらの濃度に対応した触媒活性の発現が観察され、0.1μM-1.0mMの範囲で計測できることが示された。 II.仔ウシ小腸由来のアルカリホスファターゼの固定化と識別素子への適用 (1)アルカリホスファターゼの固定化と性能評価 起源が異なるALPを上記と同様に固定化することができ、また遜色ない性能を示すことを確認できた。 (2)アポ酵素へのキレート化剤による変換と亜鉛(II)イオンの計測への適用 通電に代わり、キレート化剤として20 mM EDTA液(pH 4.0,5.O mL) を通液するだけで見かけ上、活性が認められなくなり、アポ酵素に変換されたものと見なした。さらに亜鉛(II)イオンの計測を試みたところ、1.0μM-0.5mMの範囲で定量可能なことが認められた。
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