研究概要 |
これまでに、23種のSchiff塩基についてAg^+-Ionophoreとしての機能性を電位差測定法により比較検討し、検出下限、イオン選択性、寿命など実用性の改善する方向性として、配位原子間の距離の調整、静電的効果をもたらす置換基の導入、配位原子を減じて3座配位子とすること等が有効であることを見出した。Ag^+-Ionophoreの評価については、Schiff塩基、PVC、可塑剤、陰イオン排除剤から成るPVC膜電極を作成して行なうため、マトリックス材との相補的な相互作用によって電極性能が複雑に左右され、特にAg^+に類似するTl^+、Hg^<2+>による妨害が常に問題となった。これら親油性に富むソフト金属イオンは、陰イオン排除の目的で添加したテトラフェニルホウ酸カリウム(KTpClPB)との相互作用によってPVC膜中に侵入するためであり、陽イオン排除剤と陰イオン排除剤とを適度に組み合わせることによって、最も脂溶性に富むHg^<2+>用センサーが構築できると期待された。そこで、陽イオン排除剤として、フェニル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基あるいは炭素数が2〜10のアルキル基をもつ19種類の第4級アンモニウム塩(R'R_3NX)と陰イオン排除剤として一般的なKTpClPBとを組み合わせ、PVC:30wt%,o-NPOE:68wt%,添加塩:2wt%{モル比(R'R3NX/KTpClPB)=0〜20}から成るPVC膜電極を作成し、Hg^<2+>センサーとしての性能を評価し、次の知見を得た。(1)陽イオン排除効果が不十分なベンジルトリメチルアンモニウム塩化物(PhMeNMe3Cl)とKTpClPBをモル比(10:1)とした電極は、Hg^<2+>の濃度範囲5.0×10^<-7>〜1.0×10^<-3>mol・dm^<-3>において傾き52.9mv・decade^<-1>の電位応答と優れたHg^<2+>イオン選択性(logK^<pot>_<Hg,Ag>=-3.43,logK^<pot>_<Hg,Tl>=-3.36,logK^<pot>_<Hg,M>>-5)を発揮する。また、Hg^<2+>を添加した擬似実試料を用いて実用性を確認した。(2)ペンチルトリメチルアンモニウムヨウ化物塩(PeMeNMe3I)を用いたPeMeNMe3I-KTpClPB(4:1)-NPOE系のPVC膜電極では、1.0×10^<-7>〜1.0×10^<-3>mol・dm^<-3>の範囲においてNernst応答を示し、Hg(OH)^+イオンの選択係数はlogK^<pot>_<Hg(OH),Ag>=-3.28,logK^<pot>_<Hg(OH),Tl>=-3.43に達することを見い出した。
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