研究概要 |
本研究では,重金属ならびに遷移金属イオノフォアの分子設計に関る知見の集積を目的とし,23種類のSchiff塩基誘導体を合成し、各誘導体の銀イオノフォアとしての機能性を電位差測定法により評価した.試みたSchiff塩基のなかでα-isonitrosopropiophenoneと1,3-diaminopropaneとの脱水縮合によって得られるN,N'-bis(2'-hydroxyimino-1'-phenyl-propylidene)-1,3-propanediamine(PHO3)が銀イオフォアして有望であることが分かった.即ち、PHO3-NPOE(可塑剤)-KTpClPB(アニオン排除剤)系のポリ塩化ビニル(PVC)膜電極は,5.0×10^<-7>〜7.9×10^<-2>mol dm^3のAg^+濃度範囲において良好なネルンスト応答を示すとともに、K^+に対するAg^+の選択係数の対数値(-l0g k^<pot>_<Ag,K>)は3.35に達した.この電極の唯一の欠点は約20日間の寿命であり,それを改善するにはSchiff塩基の脂溶性の向上が重要と考えられた.そこで,PHO3のメチル基を長鎖アルキル基に変換しN,N'-bis(2'-hydroxyimino-1'-phenylbuthylidene)-1,3-propanediamine(PHEtO3)を得た.PHEtO3-NPOE-KTpClPB系のPVC膜電極は,使用期間中に-log k^<pot>_<Ag,K>が4.35から2.95と変化するものの60日以上に亘り,実用的なAg^+選択性は維持される.さらに、PHO3と類似する基本骨格を持ち,配位原子数を4から3に減じた三座配位子をモノオキシムと置換ピリジンとを反応させることによって3-(2-pyridyleethylimono)-2-butanoneoxime(Me-PyO3)を得た.MePyO3-NPOE-KTpClPB系のPVC膜電極は,36mV decade^<-1>と擬似ネルンスト応答を示すものの、優れたAg^+選択性-log k^<pot>_<Ag,K>=3.8,良好な直線応答範囲(5.0×10^<-7>〜7.9×10^<-2> mol dm^3)を発揮することが分かった.
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