研究概要 |
環状分子上方の疎水性空孔により各種有機分子やフラーレンC_<60>等と特異的に相互作用することが知られているヒドロキシp-t-ブチルカリックス[n]アレーン(BC_n,n=4,6,8)をアニオン交換樹脂へ固定化し、BC_nの空孔に由来する分子認識能を有する吸着体を調製した。また、得られた吸着体によるフラーレンC_<60>の吸着挙動を検討した。先ず、BC_n(n=4,6,8)とブロモプロパンスルホン酸ナトリウムとの反応によりBC_nの水酸基をエーテル化したp-t-ブチルカリックス[n]アレーン(3-スルホプロピル)エーテル(BC_n-PS_n,n=4,6,8)を各々合成した。BC_n-PS_nの水溶液または8%アセトン水溶液中にポーラス型アニオン交換樹脂,AGMP-1を添加し、バッチ怯によるイオン交換吸着・固定化を行い目的となる吸着体を調製した。得られた吸着体によるトルエン溶媒中のフラーレンC_<60>の吸着挙動を検討した結果、6量体カリックスアレーンを固定化したものは30%程度の弱い吸着性を示した。8量体を固定化した吸着体は空孔サイズが大きくフラーレンC_<60>に対してより高い吸着性を示すと予測されたが、フラーレンC_<60>吸着性を全く示さなかった。これはBC_n-PS_nのスルホン酸基が各々樹脂上のイオン交換基と結合した結果、樹脂上のカリックスアレーンの立体構造がフラーレンC_<60>とサイズ適合しにくい形で強固に固定され充分な認識能を発現せず、より分子配向の自由度が高い8量体でこの影響が顕著に起こったためと考えられた。このため、BC_nをそのコンフォメーションに自由度を持たせたまま固定化することを目的として、フェノール水酸基の一部のみを3-スルホプロピルエーテル化したBC_nの誘導体を調製しアニオン交換樹脂上にイオン交換吸着・固定化を行なった。しかし、部分エーテル化した誘導体は溶解度が極めて乏しく吸着体を調製することができなかった。
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