研究概要 |
私達の研究室では光学活性体として簡単に入手できる4-シクロペンテン-1,3-ジオール・モノアセテート(1)(以下モノアセテート(1)と略す)にsp^2,sp^3系炭素原子団を導入する反応を開発し,さらにこの生成物に2つ目の炭素鎖(sp^3系)を導入する反応も開発してきた。見方を変えると,モノアセテート中にあったC-O不斉中心をC-C不斉中心に変換できることになる。それ故,この反応を生理活性化合物の合成に活用すれば,従来と異なり,かつ高効率的な方法が開発できると考えた。この基盤Cでは,DNA翻訳に関与する核内受容体(タンパク質の一種)に対してアゴニスト活性を示すΔ^<12>-PGJ_2およびその関連化合物の合成を計画した。さらに,ジ置換シクロペンテンを酸化開裂し,窒素原子を介して再環化して3,4-ジアルキル置換ピペリジン骨格をもつアルカロイドの合成も行なった。 Δ^<12>-PGJ_2の合成では,初めにパラジウムを触媒とするモノアセテート(1)とマロン酸エステルとの反応を確実に行わせるため,種々の塩基を検討し,t-BuOKとLDAを見いだした。脱炭酸の後,DIBAL還元してアルデヒドを調製し,これに残りの側鎖をWittig反応によって導入した。こうして合成した生成物を酸化するとキー中間体として捉えているシクロペンテノンに変換できた。このエノンとアルデヒドをアルドール反応し,水酸基をメシレート経由で脱水すると全骨格をもつ化合物が生成した。最後に酸化段階を調製すると目的化合物が合成できた。同様にして,15-deoxy-Δ^<12,14>-PGJ_2およびアセチレンアナログを合成した。 ジ置換シクロペンテンから3,4-ジアルキル置換ピペリジンへの変換反応では,高効率的かつ立体選択的に進行する合成ルートを確立し,この方法をパロキセチンの合成に応用した。 この他,モノアセテート(1)に炭素原子団を導入する反応をいくつか開発した。
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