研究概要 |
私達の研究室では,光学活性体として簡単に入手できる化合物シクロペンテンモノアセテートにアリール基やアルキル基を導入する反応を開発してきた。この反応生成物は従来法では合成困難な化合物である。昨年我々はこれらの反応生成物からΔ^<12>-PGJ_2およびピペリジンアルカロイドへの変換について研究した。これらの成果をふまえて,本年度は以下の研究を行った。 (1)Δ^<12>PGJ_2の生化学研究に必要なアナログ合成では,前年度で確立した合成法を使い,5-dehydro体,5-dehydro-15-deoxy体の合成を行なった。この際,カルボン酸(CO_2H)等価体としてCH_2OPMBを適用した。また,中性に近い条件下でカルボン酸への変換を行う反応条件を見いだした。 (2)動脈硬化の原因物質として最近特定された5,6-エポキシイソプロスタンA_2ホスホコリンの合成法の確立では,γ置換シクロペンテノンとエポキシアルデヒドとのアルドール反応をキー反応としたイソプロスタンの合成法を確立し、これにリゾホスホコリンを縮合することで目的化合物を世界に先駆けて開発した。さらに,位置異性体の合成にも成功した。 (3)ピペリジンアルカロイドへの変換を活用したキニーネおよびキニーネ骨格を持つアナログの合成法の開発では,はじめに,窒素原子の保護機としてTeoc基(Me_3Si(CH_2)_2OCO)に着目し,保護・脱保護が簡単に行えることを明らかにした。この保護基を実際のキニーネ・キニジン合成に活用すると前年度に確立した方法より短行程かつ高収率でこれらのアルカロイドが合成できた。 さらに,Claisen転位を使っていた2つめの側鎖導入をanti SN2'に換えることで様々なアナログ合成が可能になった。 (4)シクロペンテンモノアセテートにanti SN2'型でアリール基を入れる反応を初めて確立した。この反応を用いてプロスタグランジンF_<2α>の合成中間体を従来よりも簡便に合成できた。
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