研究概要 |
前年度の研究において,(t-BuO)Ph_2SiCH_2CNを反応試薬としてアルデヒドとのPeterson反応に用いると92:8 - >99:1の高い選択性で二置換Z-オレフィンが得られることを見出したが,その高い選択性が発現する反応機構を明らかにするために,1-ナフチルアルデヒドおよびベンズアルデヒドとプロピオニトリルとのアルドール付加物の水酸基を種々のシリル基で保護した化合物をモデル化合物として用い,塩基との反応を検討した。アンチのジアステレオマーは立体電子効果を考えるとZ-オレフィンを優先して与えると予想されたが,実際にどのシリル基と塩基の組み合わせであっても,ほぼZ-オレフィンのみが得られた。そのことから,オレフィンを与える直前のアニオン中間体が短寿命であり,アニオン形成後のアニオンの異性化によるE-オレフィンの形成の可能性が低いことが示された。また,シンのジアステレオマーは逆にE-オレフィンを優先して与えると予想されたが,実際には,反応条件によって比が左右される混合物を与えた。1-ナフチルの付加物を用いた場合および反応性の相対的に下がった塩基を用いた場合にZ-オレフィンの比率が増加したことから,このE1cb反応において立体効果の寄与が重要であることが示された。一方で,PhMe_2SiCH_2CO_2Etとベンズアルデヒドの付加物を単離し,逆アルドール反応が起きるかどうか検討したところ,起きないことがわかった。このことから,類似するHorner-Wadsworth-Emmons反応と機構を異にすることが明らかとなった。
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