研究概要 |
α,ω-エンインと不飽和化合物との反応は、これまでPauson-Khand反応などの研究が行われてきたが、モノインとの付加環化反応の研究例は極めて限られている。また、α,ω-エンインの環化異性化反応は、鎖状化合物から環状化合物を合成する重要な反応である。我々はこれまでに、[Ir(cod)Cl]_2/dppe触媒が1,6-ジインとアルキンの[2+2+2]付加環化反応で高い触媒活性を有することをすでに報告してきた。本研究では、[Ir(cod)Cl]_2/diphosphine触媒を用いると1,6-エンインとアルキンの付加環化反応によってシクロヘキサジエン誘導体が得られることをみいだした。また、1,6-エンインの環化異性化反応も進行し、これまで得られなかったZ体の生成物を高選択的に与えることも明らかにした。[Ir(cod)Cl]_2/dppe触媒存在下でdiethyl allyl(2-butynyl)malonateと3-hexyneをトルエン還流下3時間反応させると、付加環化体であるシクロヘキサジェン誘導体が収率73%で得られた。また、[Ir(cod)Cl]_2/dppf触媒存在下でdiethyl allyl(2-butynyl)malonateをトルエン還流下3時間反応させると、環化異性化が進行し、diethyl(Z)-3-ethyliden-4-methylene-1,1-cyclopentanedicarboxylateが収率92%で得られた。Z-選択的な環化異性化の初めての例である。これらの反応は1,6-エンインのイリジウム錯体への酸化的環化によって生成するイリダシクロペンテン中間体を経由して進行すると考えられる。
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