タンパク質の機能発現には三次元立体構造の形成が必須であるが、アミノ酸配列から三次元の立体構造への変換の規則は解明されておらず、取扱いを誤るとたやすく不可逆的な変性状態に至ってしまう。この不可逆変性の主因はタンパク質鎖同士の凝集であり、この現象はタンパク質の構造・物性研究において大きな障害となっている。本課題ではこの問題を解決するべく、精密であるがきわめて限定的・特異的である天然のタンパク質構造修復機能の短所を、汎用的な高分子化学的方法で補う方法論を構築する。具体的にはまず広汎な水溶性ポリマーを用意し、その中から蛋白質構造修復能の高いポリマーをスクリーニングする。次に選択したポリマーの構造上の特性を抽出し、高いシャペロン活性を有するポリマーの分子特性を抽出する。この結果をもとにさらに高分子の化学構造を微調整することで、実用的な蛋白質構造修復能を有するポリマーを合成する。こうして得られたポリマーは多くの研究者にとって使いやすいタンパク質生産システムの構築に大いに貢献することが期待される。
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