研究概要 |
ルテニウム触媒を用いた開環メタセシス重合(以下ROMP)の報告例には、ブロック共重合体の合成や反応性基を主鎖に持つポリマーの合成などがある。しかしいずれの場合もノルボルネン型あるいはシクロオクタテトラエンといった、環構造に大きな歪みを含むモノマーや中員環化合物に限られており、比較的安定とされている5あるいは6員環のROMPではオリゴマーしか得られていない。本研究ではシクロヘキセン環でも歪みを持たせることで、ROMPが優先的に進行すると考え、シクロヘキセン環に平面構造の5員環イミドが隣接した(1R,2R)-N-4-置換ベンジルテトラヒドロフタルイミド(RBnTPI-R')のROMPを行った。ルテニウム触媒には1st Grubbs触媒を用いて重合を行い、モノマーの重合性および構造について検討した。4位にメチル基を導入したMBnTPI-H及びニトロ基を導入したNBnTPI-Hの重合では無置換のHBnTPI-Hより収率・数平均分子量(M_n)が低下したが,bulk条件下で行うことにより重合性は向上した。イミド環との環縮合部にメチル基を導入したMBnTPI-Meは、アキシアル位に2つのメチル基が配置するためMBnTPI-Hよりシクロヘキセン環の歪みが増大し、重合性の向上が期待された。しかし、得られたポリマーのM_nは増加したが収率が低下した。また環縮合部の立体化学がtrans : cis=2:1の4位にカルボキシル基を導入したCBnTPI-Hは、trans体のみが重合した。さらにイミド環との環縮合部にメチル基を導入したCBnTPI-Meの重合では、最も高分子量のポリマーを与えた(M_n=25,800)。以上の結果から、様々な置換基を導入したRBnTPI-R'の重合性はシクロヘキセン環のコンフォメーションや置換基に大きく影響を受けることが明らかとなった
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