研究概要 |
1.主鎖型高分子液晶の相転移挙動に及ぼす鎖分子の熱力学的な役割: オキシエチレン鎖[-(OCH_2CH_2)_x-]を有する二量体液晶(MBBE-x)の実測のPVTデータをもとに、温度圧力係数(γ)と相転移に伴う体積変化ΔV_<tr>から既報に従って定容転移エントロピー(γΔV_<tr>)を決定した。その結果、結晶-液晶ならびに液晶-等方相転移に伴う全転移エントロピーの実に65%近くが定容転移エントロピーで占められていることを明らかにした。さらにPVTデータをもとに簡単な理論モデルから分子間ポテンシャルエネルギーの推定を試み、その適用範囲について言及した 1.二量体化合物の^2H-NMR及びX線測定による配向秩序解析 ジエチレングリコールとn-ペンタン鎖をスペーサーに導入したCN-φφ-OCH_2CH_2-X-CH_2CH_2O-φφ-CN [X=O : CBE2,X=CH_2:CBA5]なる二量体化合物を合成し、偏光顕微鏡観察及び^2H-NMR、IR測定結果から以下の結論を導き出すに至った。1)重水素核と隣接水素との双極子分裂幅から算出したメソゲンの配向秩序度(Szz)は、等方相(i)と液晶相(n)の相境界近傍でいずれも約Szz=0.35の値を示し、2)その温度特性はスペーサーの違いによらず両者で酷似していた。分子特性の異なる2種類の鎖分子がほぼ同等の特性コンホメーションを形成していることを示唆している。一方、液晶場のCBE2のIR測定から、ある特定の振動モードのみが、先に述べたメソゲンの配向秩序度の温度特性と類似した振る舞いを示すことが明らかとなった。DFT[B3LYP/6-31G(d)]計算に基づく振動数解析から、特定の振動モードはそれぞれ鎖分子中央のC-O-C逆対称伸縮振動とはさみ変角振動に帰属された。分子の重心の位置に関連する分子内振動と巨視的な配向秩序度との選択的なカップリングの存在は、メソゲンの配向度に依存した分子間相互作用ポテンシャルエネルギーの影響を強く受けていることを指摘した。 3.関連するテーマとして、結晶-リオトロピック液晶-等方相転移を発現するポリアミノ酸エステルの固体中で観測されるヘリックスセンス反転現象の可逆・不可逆性と温度変化に伴う単位セルあたりの密度の増減の関連性を見出した。さらにポリアスパルテート誘導体の側鎖末端の性質は、主鎖ヘリックス近傍の誘電的な環境を支配する因子として働いているものと結論した。
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