研究概要 |
本研究においては、ドナー-アクセプター相互作用を利用した新規含フラーレンカテナン、ロタキサンの創製と物性の解明を目的としている。前年度、アクセプター性のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド部位を有し、種々の架橋鎖長を有するフラーレン付加体1a-cとドナー性のジナフトクラウンエーテル2を組み合わせることにより、ロタキサン3及びカテナン4の合成に成功した。すなわち、1a-cとC_<60>との分子間Bingel反応を、2の存在下、低温で行うと、ロタキサン3a-cが生成した。一方、1a-cの分子内Bingel反応を、2の存在下、低温で行うと、架橋鎖長の最も短い1aの場合カテナン4aは生成しなかったが、架橋鎖長のより長い1b,cの場合はカテナン4b, cが生成した。本年度は、これらの研究成果を発展させ、以下を明らかにした。 ・ロタキサン3のUV-Visスペクトルにおいては、400-500nm付近にCT相互作用に由来すると考えられる吸収帯が観測された。また蛍光スペクトルにおいては、ジナフトクラウンエーテル部位に由来する蛍光が著しく消光していることが分かった。 ・ナフタレンジイミドよりもアクセプター性の弱いピロメリットジイミド部位を有する付加体1dを用いた場合、Li^+イオンを添加することにより、室温においてもロタキサン3dが生成した。この結果は、ロタキサン3a-cが室温では生成しなかったのとは対照的である。 ・収率の向上を目指し、よりアクセプター性の強いペリレンテトラカルボン酸ジイミド部位を有するフラーレン付加体2eを用いたロタキサンの合成を検討しているが、現在のところ、その生成は確認されていない。また、副反応物の生成を抑える目的で、最終反応としてカルボキシル基などの官能基を有するフラーレン付加体を用いた合成経路についても併せて検討している。
|