研究概要 |
機能プログラミング確立の観点から、2つの方法を取り組んでいる:1)キラル情報伝達による不斉反応場の創出;2)機能ユニット間相互作用の設計にもとづく自己組織型センサーの提案。本年度の研究実績を以下に記す。 1)キラル情報伝達による不斉反応場の創出 外部刺激にもとづく「形の制御」は動的反応場の創出に有効な手段である。本研究では、形の情報に不斉を用いて任意に不斉反応場を導く分子システムの構築をおこなった。まず光学不活性なビフェニル誘導体を動的不斉誘起部位として着目し、そこへ不斉情報受容部位としてふたつの亜鉛(II)ポルフィリンを分子内連結させた。このように合成したビフェノール架橋型ビス(亜鉛(II)ポルフィリン)の両ポルフィリン部位にジトピックに配位できるジピリジル系不斉誘起剤を相互作用させたところ、強い錯体形成が観測され(UV/Vis,^1H NMR,FAB-Ms)、その不斉誘起剤のキラリティーに対応したキラル配座がビフェノール架橋型ビス(亜鉛(II)ポルフィリン)に誘起されることを円二色性分散計で確かめた。これは、ビフェノール部位にキラルなねじれが発生したことを意味するもので、これを不斉反応場に展開させるべく、Ti錯体に変換し、光学異性体の作りわけができる動的不斉触媒システムの検討をおこなっている。 2)自己組織型センサーの提案 機能プログラミングは、ユニット(要素)間相互作用を設計しかつ制御することによっても達成可能である。この点に気づいたわれわれは、アニオン認識型センサーシステムに本概念を適用した。通常、分子センサーは、被検体を選択的に捕捉するレセプター部位とそれを光学シグナルに変換するレポーター部位が不可逆な結合で結ばれている。そこで、これらレセプターとレポーターをある溶液中で単独分子として存在させておき、標的の被検体が存在した場合にのみ、それらが会合(組織化)しシグナル応答させようとした。被検体が存在したときのみそれらが会合するようにプログラミングされている。この具現化は、フェニルボロン酸とピロカテコール部位をもつアリザリンの化学的性質をうまく利用することで達成可能となった。F^-などのアニオンが存在すると両者が結合して、アリザリンの光学的性質がかわる。現在、論文投稿中である。
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