研究概要 |
弱い相互作用で高次構造を形成する機能性分子はホルダマーと呼ばれる。ポリペプチドは水素結合によりα-ヘリックスや3_<10>ヘリックスのらせん構造をもつが2_7構造は平らなリボン構造となり、天然に2回らせん軸のポリペプチドは存在しない。本研究は、ジペプチドミミック(模倣)の分子設計から2-アミノフェノシキ酢酸類に着目し、水素結合によるホルダマーとして新たな2回らせんペプチドを構築し、その高次構造の特性を解明し、生化学やペプチド化学へ提供するものである。 1.2-アミノフェノキシ酢酸類のオリゴマー合成: 2-ニトロフェノキシ酢酸類のモノマー合成を確立した。さらに、テトラマーまでの化合物を合成した。 2.ヘリックス形成の特性解明: (1)導入する不斉炭素の数に応じてらせん構造の誘起は強くなる。また、テトラマーに対して単結晶X線構造解析から固体状態での2回らせん構造の形成を確認した。 (2)シクロヘキサン中では、C末端のα-炭素1つに不斉炭素を導入するとCDスペクトルにヘリックス誘起による強いコットン効果を観測し、ペプチド鎖の伸長とともにらせん構造が誘起された。 (3)水素結合を弱める極性溶媒中ではヘリックスの誘起CDは弱くなる溶媒効果を確認した。すべてのα-炭素に不斉炭素を導入したオリゴマーのらせん構造は溶媒に依存しない。 3.固相合成法の確立: 迅速かつ効率よく多様な側鎖オリゴマーを検討するために、通常の天然ペプチド固相合成法である9-ブルオレニルメチルカルバメート法(FMOC法)へ応用した。 4.官能基導入によるヘリックス構造の機能化と構造制御: ホルダマーの2つのベンゼン環上にカルボキシル基を導入した。立体の異なるシクロヘキサンジアミンと錯形成を検討し、(S, S)-体と錯形成でヘリックスの安定化が確認された。分子間相互作用を利用したヘリックス構造の制御ができた。
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