| 研究概要 |
本研究は、物質拡散が常温・常圧環境下よりも容易な超臨界環境下において,チオフェン誘導体の電解酸化重合を行い,ナノレベルで緻密かつ平坦な高分子薄膜をナノ集積材料の一つとして合成すると共に、薄膜物性を評価し、多重応答型バイオセンサーへの応用へと繋げることを目的とする。具体的には、テトラキスチオフリルポルフィリンのようなチオフェン誘導体を配向制御して薄く均質に成型した高分子薄膜を作用電極部とする活性酸素種センサーを作製し、その特性解明について検討することを目的とする。本年度は以下の成果が得られている。
1.活性部位として働く機能錯体の合成
ポリチオフェン誘導体(ポリテトラキスチオフリルポルフィリン)を量合成し、分子構造を正確に把握した。チオフリル基の置換位置の違いに基く生成ポリマーの高次構造の違いにより、最終的な薄膜物性に著しい差異が予測されるため、計算シュミレーション(分子力場解析)を併用しながら分子設計を行った。ピロールとチオフェン-x-アルデヒド(x=2および3)をプロピオン酸中で環化縮合させ,対応するポルフィリン類を得た。次に、常温常圧下でこれらポルフィリン類の有機溶媒中での電解重合を行い、単量体の酸化還元電位、酸化状態の安定度、重合活性種の構造と重合機構、生成物の構造、得られる薄膜の性質やモルフォロジーを把握した。併せて酸化剤を用いた酸化重合により対応するポリマーを合成し、電気伝導度等のバルク物性を明らかにし、これらが導電性を示すことを明確にした。
2.超臨界流体を用いた電解酸化重合による機能高分子薄膜の合成
超臨界二酸化炭素環境下における電解酸化重合を、独自に工夫した反応装置を用いて検討した。まず簡単なチオフェンとピロールを単量体に用いて電解酸化重合を行い、基板上に重合物質が形成することを明らかにするとともに、重合条件を系統的に変化させて、薄膜作製の基礎的要件を把握した。具体的には、単量体や支持塩などの濃度,助溶媒の有無,温度と圧力,電解条件(可逆電位掃引,定電位,定電流,定電圧)などの条件を変化させ,最適条件を明らかにした。これらの知見に基づき、合成ポルフィリン類の電解酸化重合に今後展開するための基礎知見が得られた。
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