研究概要 |
平成16年度は主に次の3項目について研究を行った。 (1)ベンジル2置換体の環状配位子および類似の環状配位子の銅(I)錯体を用いて,アセトニトリル中,酸素共存下でフェノール類のオルトヒドロキシル化反応が起こることを初めて明らかにした。これらの環状配位子-銅錯体を用いて,環境ホルモン候補物質であるビスフェノールAの酸化反応を調べ,ビスフェノールAでも酸素添加反応が起こることを明らかにできた。この酸化による生成物は,NMR分析および質量分析から,ビスフェノールAの片方のベンゼン環がキノンに酸化された,モノオルトキノン体であることがわかった。この化合物はビスフェノールAよりも環境ホルモン作用は著しく低いことが報告されている。従って,環状配位子-銅錯体を用いて環境ホルモン候補物質ビスフェノールAを酸化無害化できる可能性があることが明らかになった。 (2)チロシナーゼの機能であるフェノールのオルトヒドロキシル化ならびに生成するカテコールのオルトキノンへの酸化において,より優れた能力を持つ環状配位子およびそれらの銅錯体の探索・合成を行った。この研究中に,環状ではないがある二核化配位子の銅錯体がビスフェノールAを触媒的に酸化できる可能性を見出した。 (3)環状配位子を用いて,ラッカーゼの活性中心部位である三核銅錯体のモデル化(1分子中に2個以上の環状配位子を含む多環状配位子の合成も含む),を行った。3個目の金属イオンに配位可能な部位を持つ官能基を導入して,2個のトリアザやテトラアザなどの環状配位子を架橋し,三核化可能な配位子を合成することができた。
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