研究概要 |
平成17年度は主に次の3項目について研究を行った。 (1)前年度,ベンジル2置換体のテトラアザ環状配位子および類似の環状配位子の銅(I)錯体を用いて,アセトニトリル中,酸素共存下でフェノール類のオルトヒドロキシル化反応が起こることを初めて見出し,環境ホルモン候補物質であるビスフェノールAでも酸素添加反応が起こることを明らかにできた。本年度は,この酸素添加反応での反応活性種を明らかにするために,低温(-80℃)で可視部吸収スペクトルを測定し,テトラアザ環状配位子銅(I)錯体と酸素との反応を調べた。その結果,環状配位子の種類に依存して酸素付加錯体と考えられる2種類の吸収スペクトルを測定することが出来た。これらの結果は,テトラアザ環状配位子銅錯体の酸素付加錯体が生成している事を示す初めてのデータであると考えられ,別方法の確認実験を試みている。 (2)様々なトリアザ環状配位子の銅錯体について,チロシナーゼ機能を示す,すなわちフェノールのオルトヒドロキシル化と生成するカテコールのオルトキノンへの酸化反応を起こすものの探索・合成を行った。ほとんどの錯体が反応性を示さなかった中で,10員環のトリアザ環状配位子の銅錯体が,室温,アセトニトリル中、酸素共存下でビスフェノールAをモノキノン体に酸化できることを見出した。 (3)テトラアザおよびトリアザ環状配位子を用いて,ラッカーゼの活性中心部位である三核銅錯体のモデル化(1分子中に2個以上の環状配位子を含む多環状配位子の合成も含む),を行った。3個目の金属イオンに配位可能な部位を持つ官能基を導入して,2個のトリアザやテトラアザの環状配位子を架橋し,三核化可能な配位子を合成することができ,第55回錯体化学討論会で発表した。
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