研究概要 |
平成18年度は主に次の3項目について研究を行った。 (1)これまでに、ベンジル2置換体のテトラアザ環状配位子および類似の環状配位子の銅(I)錯体を用いて、アセトニトリル中、酸素共存下でフェノール類のオルトヒドロキシル化反応が起こることを初めて見出し、環境ホルモン候補物質であるビスフェノールAでも酸素添加反応が起こることを明らかにできた。本年度は、この酸素添加反応での反応活性種を明らかにするために、低温(-80℃)で可視部吸収スペクトルを測定し、テトラアザ環状配位子銅(I)錯体と酸素との反応を調べた。その結果、酸素錯体の生成に基づく可視部吸収スペクトルを始めて観測することに初めて成功した。しかも、酸素錯体のスペクトルは、ベンジル2置換体と3置換体の環状配位子では、大きく異なっていることがわかった。さらに、これら酸素錯体の配位構造を明らかにするため、溶液中、低温でのラマン測定を行うための、基礎的な実験を積み重ねた。 (2)様々なトリアザ環状配位子の銅錯体について,チロシナーゼ機能を示す、すなわちフェノールのオルトヒドロキシル化と生成するカテコールのオルトキノンへの酸化反応を起こすものの探索・合成を行った。この過程で見出した、フェノール酸化能力の比較的高い銅錯体を形成する10員環のトリアザ環状配位子を2個、メタキシリレンで繋いだ二環状配位子を合成し、その酸素錯体の生成とフェノールのオルトヒドロキシル化を調べた。 (3)ラッカーゼの活性中心のモデル化に、テトラアザ環状配位子のかわりにトリアザ環状配位子を用いることにより、実際の三核構造をよりモデル化可能な三核化二環状配位子を合成した。 以上の結果は、第56回錯体化学討論会で発表し、第57回錯体化学討論会でも発表する予定である。
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