研究概要 |
(1)「探索に用いる配位子およびその金属錯体の合成」:酸素を活性化しフェノールに酸素添加を行う機能を持つ銅(I)錯体を探索するため、多数の新しい環状配位子および二核化配位子を合成した。さらに、得られた環状配位子の銅(I)錯体を用いて、酸素活性化および環境ホルモン候補物質であるフェノール類の酸化反応を調べた。 (2)「酸素存在下で環状配位子-銅(I)錯体を用いたフェノール類の酸化反応」:上記(1)で得られた環状配位子を用いて銅(I)錯体を生成させ、アセトニトリル中、酸素共存下で環境ホルモン候補物質であるフェノール類の酸化反応を検討した。まず実験方法を検討し、一定の条件で酸化反応を行い生成物を分析して同定と定量を行った。その結果、ベンジル2置換体の環状配位子および類似の環状配位子の銅(I)錯体を用いて,フェノール類のオルトヒドロキシル化反応が起こることを初めて明らかにした。また、ビスフェノールAの酸化反応も調べ、生成物としてオルトキノン体が得られることを明らかにした。 (3)「環状配位子-銅(I)錯体による酸素錯体の生成-低温スペクトル測定-」:続いて、環状配位子-銅(I)錯体によるフェノール酸化の機構を解明する目的で、反応の中間体であり活性種と考えられる酸素錯体の存在と構造を明らかにする研究を行った。低温下で吸収スペクトル測定を行い、環状配位子-銅(I)錯体が酸素付加錯体を形成することを初めて明らかにした。 (4)「ラッカーゼ活性中心のモデル化を目指した三核化配位子の合成」:2個の環状配位子をビピリジンで架橋した三核化二環状配位子を合成した。この配位子は三核金属錯体を形成でき、かつ架橋部のビピリジンが金属イオンに配位することで、2個の環状配位子の立体的配置を制御できることが明らかになった。
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