研究概要 |
近年、化学系高等教育機関に所属する学生の化学物質に対しての意識に大きな幅があり、取扱い上の危機意識の全く無い学生も多く在籍していると言われている。今回のアンケート調査では化学科学生の約半数は学生実験において与えられた化学物質は安全なものと思い、さらに研究実験においてもその廃棄を含め安心して扱っているようである。アンケート結果は彼らの卒業後の進路のうち1/3が非化学系である現状と対応していた。そのような状況下でこそ機関内で化学物質はより厳重に管理されなければならない。現に実験室事故は多発しており、薬品管理においても従来のPRTR制度,劇物毒物法、消防法等に対する法令遵守に主眼を置いたシステムでは不十分であると思われる。化学系学科学生は一層の安全・危険意識を持たなければならない。そのためにカリキュラムとして「安全化学」だけではなく「化学安全学」の導入を提案した。従来の市販システムを小規模な一研究室で運用した実績により、薬品使用者(学生・教職員)の管理責任を明確にするためのシステム構築を目指した。法規対応の従来システムは機関内の物流を厳密に追跡するために重量計測に重点を置いた『モノ』管理であるが、それに加え今回は各人の使用履歴に基づく『ヒト』管理システムを模索した。例えば、各人の身分証明書には占有中の薬品が記録され、使用履歴も管理サーバに記憶される。そのために書き換え可能であり、かつバーコードに比べ記憶容量が飛躍的に大きなICタグ(チップ)使用のシステムを検討した。今回は研究室単位の小規模システムを検討したが、将来流通試薬びんにはバーコードに代わり安価なICチップが貼付されていることを想定した。しかし残念ながら本報告はシステムの概念までとし、具体的なシステムを構築するには至らなかった。
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