単糖と結合することが知られているフェニルボロン酸を修飾したヌクレオチドを合成した。このヌクレオチドとDNAポリメラーゼを用い、ボロン酸修飾ヌクレオチドを合成した。DNAポリメラーゼは、生体内では本来、遺伝子の複製に用いられる酵素であり、一本鎖DNAから二重鎖DNAを合成する酵素である。しかし申請者らの研究により、非天然ヌクレオチドもDNAポリメラーゼの基質となることが示された。ランダム配列の鋳型DNAを用い、ボロン酸が種々の位置に修飾されたボロン酸修飾DNAライブラリーを合成した。例えば20merのランダム配列のDNAを用いると、4^<20>=1×10^<12>種類の分子を作り出すことができる。これらのボロン酸修飾非天然DNAライブラリーの中には糖の水酸基と多点で結合できるDNA分子が存在すると考えられた。 50merのランダム領域を有する化学合成DNAを鋳型とし、フェニルボロン酸修飾ヌクレオチドとDNAポリメラーゼを用いてボロン酸修飾一本鎖DNAライブラリーを調製した。上記のライブラリーを用いてシアリルルイスxをターゲットとしたセレクションを行った。水晶発振子にアビジン-ビオチン結合を介してシアリルルイスxを基板上に固定化した。フェニルボロン酸修飾DNAライブラリーと、このシアリルルイスxを相互作用させた。結合しない分子は洗い流し、結合した分子だけを回収した。この分子をPCR法により増幅し、再度、シアリルルイスx固定化水晶発振子に流した。これを繰り返した後、クローニング、塩基配列解析を経て、シアリルルイスxに結合するボロン酸DNAの構造を明らかにした。
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