研究概要 |
まず、沖縄沿岸のサンゴ礁トワイライトゾーン(水深50m以深)から海洋生物資源の探索を行った。採集した海綿等の抽出物を細胞毒性等を指標にスクリーニングを行った。その結果、恩納村沿岸で採集した黄色海綿Suberites japonicusが強い細胞毒性を示したことから、その活性成分を分離・精製したところ、Seragamideと命名した一連の新規デプシペプチドを見出した。それらの化学構造は、NMR等の機器分析、Marfey法によるアミノ酸の絶対配置の決定、および誘導体の作成により決定した。これらはその分子構造がJaspamideに似ていたところから、その活性がアクチンの脱重合阻害にあると推定された。そこで、prodan化アクチンを使用して、その活性を蛍光測定で調べたところ、予想通りF-アクチンの脱重合阻害、およびG-アクチンの重合促進であることを確認した。このSeragamideそのものも分子プローブとして使えると期待されるが、さらに細胞生物学等に使い易いように蛍光誘導体の作成を試みた。Geodiamolide Aとの関連からSeragamide中のThr残基のヒドロキシル基にRhodamineを付けたが、ほとんど活性が失われていた。そこで、Tyr残基のフェノールを利用して、Rhodamineをつけたところ、細胞質を染色することができた。これは細胞生物学で多用されるRhodamine-phalloidinよりも有機溶媒に対する溶解性がよく、新規な分子プローブが創生できたのではないかと期待される。 S.japonicusと同様に採集した未同定の赤色海綿は培養細胞に対し、強い毒性を示した。これについても成分を調べたところ、既知のLatrunculinA, Bであることが判明した。
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