今年度は、昨年度の続きのseragamide類の研究、ならびに新たにサンゴ礁トワイライトゾーンで採集した海洋生物を材料にその毒性成分等の研究を行った。 先に報告したseragamide A-Fについては、ポリケチド部分の立体構造が不明確であったので、seragamide Aを使用して立体配置の確認を行った。seragamide Aをアルカリ処理したものと別途インドネシア産海綿から取り出したjaspamide(jasplakinolide)から同様に誘導したもののNMRデータを比較することにより、同一の立体であると結論した。 沖縄本島で採集したソフトコーラルの一種Eleutherobia sp.の脂溶性分画が細胞毒性を示したことから、これを分離しジテルペン類を取り出した。NMR等のデータ解析の結果、これらはxenicane型の新規ジテルペン類および既知のsarcodictyinであった。sarcodictyinおよび関連のeleutherobinには微小管に対する活性が知られていることから、現在sarcodictyinを出発原料に有用な誘導体作成を模索している。xenicane類には弱い細胞毒性が見られた。 ウミウシの一種Glossodoris cinctaの抽出物は、強い細胞毒性を示した。そこでこれを分画したところ、2つのセスタテルペンを見出した。一方、このウミウシが摂食していた海綿Hyrtios sp.を調べてみると、類似の化合物が含まれており、明らかに餌由来であることが判明した。ウミウシにだけ含まれていた成分は細胞毒性が少し弱く、ウミウシの体内で変換されたのかもしれない。 さらに沖縄本島恩納村沿岸のサンゴ礁トワイライトゾーンで採集した20種程度の海綿などの無脊椎動物を材料に毒性成分のスクリーニングおよび化学的研究を行っており、次年度にその成果を報告したい。
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