今年度も昨年度に引き続き沖縄本島沿岸のサンゴ礁トワイライトゾーンからの未利用海洋資源の採集を行い、50種以上の試料を収集した。比較的量が多かった20種程度を材料に細胞毒性のスクリーニング、およびNMRでの主成分の検討を行った。その結果、約半数のものは10μg/mLで毒性を示し、従来サンゴ礁の浅い部分の生物から得られている結果と大きな差は見られなかった。以下、いくつかの試料についての結果について述べる。 海綿Dysidea cf. arenariaは白い被覆状の海綿で、近縁のD. arenariaがarenastatinなどの生理活性成分を含有することから新規生理活性物質の存在が期待された。実際、D. cf. arenariaのエキスは細胞毒性を示し、これをクロマトで分画したところ、一連のspongian骨格を有する新規ジテルペン6つと既知関連化合物3つを見い出した。これらの化学構造については、詳細なNMR等による検討によって立体配置も含めて推定した。さらにNBT-II細胞に対する毒性の結果は構造活性相関に若干の示唆を与えた。現在のところ、これらの化合物の詳細な標的分子に関しては判明してない。 この他にも未同定海綿やソフトコーラルの一種Cespitularia sp.の成分等を検討したが、既知のイソシアノセスキテルペン、プレニル化したフェノール類、xenicane型ジテルペンなどの単離に終わった。 しかしながら、本研究期間中に採集した試料の研究はまだ終わっておらず、また興味深いエキスがいくつもあることから、今後の研究によってさらなる新規生理活性物質が見い出せるものと期待される。
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