沖縄沿岸のサンゴ礁トワイライトゾーンと呼ばれる水深40m以深の海底から底生生物を採集し、新規生理活性成分の探索を行った。 海綿Suberites japonicusからは、強い細胞毒性成分としてseragamide A-Fと命名した一連のデプシペプチド類を見い出し、スペクトルデータの解析と誘導体作成などを通して化学構造を明らかにした。生理活性については、培養細胞の細胞質の分裂を阻害することからアクチンを標的にしていることが推定された。そこで、蛍光ラベル化したアクチンを使用した実験により、seragamide AのF-アクチン脱重合阻害作用とG-アクチン重合促進作用を確認した。 次に海綿Dysidea dv.arenariaの毒性成分を検討したところ、spongian骨格を有する一連の新規ジテルペンを得た。構造はスペクトルデータの解析ならびに関連化合物との比較により決定した。また、この海綿については4つの場所で採集した標本について分析したが、含有しているspongian類に多様性が見られた。 国頭村で採集したムチヤギEllisella sp.からもbriarane型ジテルペンを見い出し、それらの構造ならびに細胞質分裂阻害作用を報告した。 この他にも沖縄本島恩納村沿岸でリブリーザーを使用して海洋生物資源(44種)の採集を行い、それらのスクリーニングを行った。現在までに強い細胞毒性を示し同定された化合物は、latrunculinなど既知の物質であるが、本研究期間終了後もこれらの生物から得たエキスの生理活性物質を分離しており、新しい物質を見い出せるものと期待している。 また、これまでにサンゴ礁トワイライトゾーンを含めサンゴ礁生物から見い出したアクチン標的成分ならびにタンパク合成阻害成分の分子プローブ(研究試薬)としての活用を図った。
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