沖縄県石垣島近海に生息する軟体サンゴClavularia viridisはclavulone類など60種を超える多様な構造のプロスタノイド(PG)を産生しこれらの一部は抗腫瘍活性を示す。さらに、これらの構造上の特徴は、これらが哺乳類のPG類のようにアラキドン酸(AA)にシクロオキシゲナーゼが関与して生合成されたと考えるには多くの矛盾点を含んでいる。このことはすでに米国のCorey教授らによって指摘され、彼らは生合成類似反応実験の結果などからclavulone類などC.viridisが産生するPS類はAAにリポキシゲナーゼ(LOX)が作用して生合成されることを提唱していた。 そこで筆者は、この仮説を実証することは動物が持つ新たなPG類の生合成経路の発見となることから以下の研究を行った。上記の生合成類似反応反応実験を再現し、生成物の構造を検討したところ生成物(8-hydroperoxyeicosatetraenoic aidおよびpreclavulone-A)は鏡像異性体混合物であることが明らかとなり、さらにこの生合成へのLOXの関与強く示唆された。そこで、C.viridisのcDNAライブラリーを用いてLOX遺伝子のスクリーニングを行って550bpのLOX-アレンオキシド合成酵素(AOS)のDNA断片を得た。さらにこれをプローブとしてAOS-LOX融合タンパク質の遺伝子(アミノ酸数:1066)を単離した。現在この遺伝子の発現と、発現されたタンパクの酵素機能の解明を行っている。 本研究の結果、C.viridisのPG生合成経路に関与すると考えられるAOS-LOXをコードする遺伝子が増幅、単離された。さらに、それらの塩基配列とこの遺伝子の発現によって生成するタンパクのアミノ酸配列を明らかにすることができた。本結果は学術論文として専門雑誌に投稿し現在審査中である。
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