研究課題
生体内では、タンパク質はお互いに相互作用して存在している。本研究では、オリゴペプチドをタンパク質の部位モデルとして用い、ペプチドとタンパク質の相互作用を詳細に調べることにより、タンパク質の分子認識様式、他分子との相互作用による構造変化及びその機能への影響、タンパク質とペプチドとの反応性を解明することを目的としており、本年度は、以下の成果を得た。プラストシアニン(PC)は正電荷を持ったリシンペプチドと相互作用することが解っている。そこで、TyrTyrTyr(YYY)ペプチドとPCとの相互作用を強くするために、PCと相互作用するKKKKをYYYに付加したKKKKYYYペプチドを作成した。しかし、このオリゴペプチドをPCと混合しても、597nmにおけるPCの吸光度は変化せず、PCの還元反応は観測されなかった。PCとKKKKYYYは静電的に相互作用していると考えられるが、PCの還元反応は起こらなかった。この原因は、生じた(KKKKYYY)^.ラジカルと遊離のKKKKYYYは静電的に反発し、(KKKKYYY)^.ラジカルは反応する前に還元型PCから電子を受け取るためと考えた。そこで、生じた(KKKKYYY)^.ラジカルと反応するYYYペプチドを反応溶液に加え、KKKKYYYとYYYを共存させたところ、YYYのみの場合より、PCの還元反応が約1.5倍速くなった。このことより、負に帯電しているPCのnegative patchとKKKKYYYのKKKK部位が静電的に相互作用して電子がKKKKYYYからPCに移動し、生じた(KKKKYYY)^.ラジカルがその周りに存在するYYYと疎水的に相互作用して反応し、(KKKKYYY)^.ラジカルの生成が促進され、還元反応が速くなったと考えた。この還元反応はYYYの量が多いほど速く進んだことより、反応速度はKKKKYYYの量ではなく、YYYの量に左右されることが解った。以上のように、PCがリシンペプチドと静電的に相互作用するという知見をもとに、リシンとチロシンを含むオリゴペプチドを新たに設計し、タンパク質の還元反応速度を速くすることができた。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
J.Am.Chem.Soc. 128・23
ページ: 7551-7558
Journal of Inorganic Biochemistry 100・11
ページ: 1871-1878