研究概要 |
本年度は、α,α-ジ(2-ピリジル)グリシン(2Dpy)、α-フェニル-α-(2-ピリジル)グリシン(2Ppg)およびピリジン環以外のヘテロ環を含む種々のペプチドの合成およびそれらの配座解析について以下の検討を行った。 1.まず、Ugi反応によるトリペプチド(Z-AA_1-2Dpy-AA_3-OMe)の合成を行い、銅イオンとの錯体を調製し、これらについてESRスペクトルを測定した。その結果、2Dpyの前後のアミノ酸がGlyの場合は典型的な銅錯体と比較して銅と4つの窒素原子が形成する平面がややゆがんでいると推察された。また、トリペプチドからN端およびC端へのペプチド鎖の延長を図り、両端それぞれの脱保護を行い、その繰り返し構造をもつヘキサペプチドの合成を検討し、Z-Gly-2Dpy-Gly-Gly-2Dpy-Gly-OMeを合成した。NMRの解析より、2個の2Dpyの4個のピリジン環窒素すべてが4個のアミドプロトンと分子内水素結合していることを確認した。 2.不斉炭素原子をもつ2Ppgを含むペプチドについて、それらのキラリティーについても検討した。トリペプチド(Z-AA_1-DL-2Ppg-AA_3-OMe : AA = Gly, Aib)のC端を遊離にした後、10種のキラルなアルコールを結合させてエステルのジアステレオマーを合成した。これらのうち、6種のエステルについてジアステレオマーのTLCによる分離が認められ、2種についてジアステレオマーの多量分取に成功した。それらのCDスペクトル解析で2Ppgのキラリティーを決定することができた。 3.ピリジン以外のヘテロ環として、チアゾール環およびピラジン環を導入した新規なα,α-二置換グリシンを含むトリペプチドの合成を行い、それらについてもピリジン環と同様に、ヘテロ環内の窒素原子がアミドプロトンとの分子内水素結合を形成していることを明らかにできた。
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