研究概要 |
本研究では、酵素をはじめヘムタンパク質の機能特異性を構造との関係から明らかにする目的で、補欠分子ヘムへNMRプローブとなるフッ素置換基(F基、CF_3基など)の位置特異的導入を検討した。そして、得られた新規フッ素化ヘムを用い、アポタンパク質との再構成を行い種々の物性測定を行った。 1.新規フッ素化ピロール、ポルフィリン、ヘムの合成 (1)ピロールβ位にモノフルオロ基が置換した種々のピロールの合成条件を確立した。 (2)β位に2つのモノフルオロ基をもつピロール同士のカップリングは成功しなかったが、β位に1つのモノフルオロ基をもつピロールとのカップリングは成功し、合計3つのモノフルオロ基をもつジピロメテンを得た。 (3)モノフルオロ基が3つ置換したジピロメテンを原料に、ポルフィリンの合成を種々検討したが、モノフルオロ基が小さく、環化の際に立体効果が働かず収率は数%にとどまった。 (4)トリフルオロメチル基をもつピロールの化学修飾反応の条件を種々検討して、対称な位置にトリフルオロメチル基をもつジピロメタンの合成に成功した。 (5)トリフルオロメチル基が2つ対称な位置に置換した天然型ポルフィリン、およびヘムの合成に成功した。(2,8-DPFポルフィリン、ヘム) (6)2,8-DPFヘミンとアポミオグロビンとの再構成を行い、通常通りフッ素化ヘムを含む再構成タンパク質を得た。 2.新規フッ素化ポルフィリン、ヘムおよび再構成ミオグロビンの物性評価 (1)再構成タンパク質においても、^<19>F核シグナルは観測可能であり、構造解析にも適用できることが明らかになった。 (2)先の7-PFヘミンと2,8-DPFヘミン及びそれぞれの再構成タンパク質をNMR、酸素親和性等の測定で比較すると、トリフルオロメチル基の置換基数の違いを、その電子効果(電子求引性)として観測できることがわかった。
|