研究概要 |
本研究では、アモルファス分子材料を用いて、表面レリーフ回折格子(SRG)形成ならびに偏光誘起分子配向など、光照射により誘起される物質移動現象を検討し、そのメカニズムを解明するとともに、フォトニクスへの応用をはかる。本年度は、分子構造とSRG形成能との相関を明らかにすることを目的として、分子内に二つのアゾベンゼン骨格を有し、その置換位置が異なる二種類の新規フォトクロミックアモルファス分子材料N,N'-bis[4-(phenylazo)phenyl]-N,N'-diphenyl-p-phenylenediamine(1,Tg=80℃)およびN,N-bis[4-(phenylazo)phenyl]-N',N'-diphenyl-p-phenylenediamine(2,Tg=78℃)を設計・合成し、これらのSRG形成能を比較・検討した。 1および2のアモルファス薄膜にAr^+レーザーの488nmの二光波(光強度:10mW x 2、偏光方向:p-偏光に対して+45°:-45°)を干渉露光すると、薄膜表面にSRGが形成された。1の薄膜に形成されたSRGの回折効率は20%、凹凸差は240nmであるのに対し、2の薄膜についてはそれぞれ5%、120nmであり、1の方がよりSRG形成能に優れることが明らかとなり、二つのアゾベンゼン骨格の置換位置がSRG形成に大きな影響を与えることが明らかとなった。以上の結果は、分子内の二つのアゾベンゼン骨格の長軸方向が平行であるか否かを考慮することにより、anisotropic diffusion modelによって合理的に説明できる。
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