研究概要 |
本研究課題は,ダイヤモンド表面における新たな電気化学発光反応を探索し,その反応プロセス解明により、ダイヤモンド電極を用いた次世代型電解発光センサーデバイス,特に,新規医療用センサーの実現を図ることを目的とした. [1]ダイヤモンド電極表面における新規電界発光反応の探索 ダイヤモンド電極におけるルテニウムビピリジル錯体を利用した電解発光反応では,アスコルビン酸共存下,3.5Vという極めて高い電位領域において,高輝度な発光反応挙動が観測された.この発光反応のピーク電位は共反応物質濃度に比例し,発光強度は共反応物質のOHラジカルによる水素引き抜き速度と高い相関関係を示すことから,この高電位電解発光反応には,ダイヤモンド表面で生成するOHラジカルによる共反応物質のラジカル化プロセスが関与することが判明した.この高電位発光反応の電気化学分析への適用により,OHラジカルによりラジカル化可能な2-プロパノールやテトラヒドロフラン等の高感度選択検出が可能となる. [2]医療用ダイヤモンド電解発光センサーの開発〜尿中蓚酸・アミノ酸分析装置の開発 ルテニウムビピリジル錯体を用いる電解発光反応は,尿中に存在する多数の電気化学活性化合物の中から,pH制御によりシュウ酸を選択的に検出可能な手法である.選択センシング可能な光機能性電極実現のため,多結晶ダイヤモンド表面への高耐久性かつ修飾量の高い(高発光輝度)ルテニウム錯体の修飾方法の開拓を行なった.修飾法にはビピリジル配位子に側鎖として導入したドデシル基-表面炭素間にC-C結合を形成する方法を採用した.作製した直接修飾電極を,ECL検出器に導入したHPLCシステムを用いて実尿を分析すると,実尿中のシュウ酸成分のみに対しECL発光が観測された.この発光強度はFIA分析における発光強度と一致することから,実尿中のシュウ酸を選択的に5μMの低濃度まで検出可能であることが判明した,この修飾電極は,3時間の連続分析後も輝度低下がない. 導電性ダイヤモンド表面にルテニウム錯体を直接修飾することにより,尿中シュウ酸を選択検出可能かつ,高い長期作動信頼性を兼ね備える,光機能性電極の創製に成功した.
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