本年度においては、前年度において合成された含フッ素有機/シリカゲルおよびマグネタイトポリマーハイブリッドの機能の解明を中心に検討を行った。具体的には、これら含フッ素有機/無機ポリマーハイブリッドによるポリメチルメタクリレートおよびポリスチレン等の汎用の有機高分子材料への表面改質について、ドデカンおよび水の接触角測定、走査および透過電子顕微鏡観測等により詳細に検討を行った。その結果、これらフッ素系有機/無機ポリマーハイブリッドはナノレベルの分散安定性の高い1次粒子を形成し、汎用の高分子材料表面に均一に分散していることが初めて明らかとなった。 さらに、本研究ではフッ素系有機/シリカゲルポリマーハイブリッドにゲスト分子としてヒビテン等の汎用の抗菌剤がカプセル化されたナノコンポジットの合成に成功し、これらナノコンポジットは黄色ブドウ球菌さらには緑膿菌等に対して高い抗菌活性を示すことをも明らかにさせた。従って、本研究により開発されたナノレベルで構造が制御された含フッ素有機/無機ポリマーハイブリッドは生理活性材料への展開も可能であることがわかった。 このように、本研究により初めてその開発に成功した含フッ素有機/無機ポリマーハイブリッドは、ガラス等の無機材料以外に汎用の有機高分子材料の表面改質剤への応用を可能とさせ、さらに抗菌活性等の生理活性を示す新しいタイプのフッ素系機能性材料への展開を可能とさせた。従って、これらフッ素系有機/無機ポリマーハイブリッドは種々の分野への応用展開が大いに期待できるきわめて興味深い材料である。
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