研究概要 |
アゾアルカン類の光誘起電子移動反応では、脱窒素したラジカルカチオン種が発生することが知られている。今回、共役系ピラゾリン誘導体を用いることにより、脱窒素していないラジカルイオン種の発生を確認するとともに、照射波長により電子移動を制御することに成功した。 合成した共役ピラゾリン誘導体に対して適切な吸収を持つ増感剤を選択し、電子移動型増感剤励起による過渡吸収スペクトルを測定した。アゾ化合物が一電子酸化あるいは一電子還元されることで発生するイオンラジカル種の吸収が観測されることが期待された。電子受容型増感剤として、ジシアノナフタレンやメチルキノリニウム、ピリリウム塩、ジシアノアントラセンなどを用い、また電子供与型増感剤として、ジメトキシナフタレン、テトラメチルベンジジンなどを試みた。その結果、発生する過渡種の吸収と増感剤の吸収や発光が重なるなど、多くの問題が発生し、共増感剤の存在等も必要であったが、ナノ秒フラッシュフォトリシスの308nm,355nm励起で、過渡吸収スペクトルの観測こ成功した。電子受容型増感剤存在下ではラジカルカチオン種、電子供与型増感剤下ではラジカルアニオン種が観測された。特に、ラジカルアニオンの観測はアゾアルカン類では初めての例である。 これらの結果に基づいて、共役ピラゾリン誘導体と2種類の増感剤を存在させる、3成分系の実験をおこなった。その結果、308nm光励起ではラジカルアニオンの、355nm光励起ではラジカルカチオンの発生を確認した。これは照射波長により電子移動を制御できたことを意味する。
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